HbA1cとは?
HbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)は、糖尿病のリスクの指標になる値です。赤血球であるヘモグロビンが、どれくらいの割合で糖と結びついているかを指します。
「血糖値」とは異なり、直前の食事・運動の影響を受けずに、過去1~2カ月間の血糖値の平均を反映した数値が分かります。
HbA1cと血糖値の違い
血糖値とHbA1cは、どちらも糖尿病のリスクを調べるにあたって重要になります。
血糖値は、現在の血中のブドウ糖の濃度を指しますので、直前に食事をしたかどうかでその値が大きく変化します。それゆえ、空腹時血糖値と随時血糖値に分けて測定・判定します。
一方でHbA1cは、ヘモグロビンがどれくらいの割合で糖と結びついているかを表した値です。赤血球(ヘモグロビン)の寿命は120日ほどであり、3~4ヵ月前の赤血球は全体の1割ほどとなるため、その期間を除いたおおよそ1~2カ月前の血糖値を反映した結果が得られます。またこの結果となる数値が、直前の食事・運動の影響を受けない点も特長です。
HbA1cの基準値
いくつか基準がありますが、特定保健指導に基づいた基準値は以下の通りです。
5.6%未満 | 基準値 |
---|---|
6.5%以上 | 糖尿病の疑いが強い |
7.0%以上の状態が続く | 合併症のリスクが高くすぐに治療が必要 |
HbA1cが高い場合に疑われる糖尿病
HbA1cの値が高い場合には、糖尿病が疑われます。
糖尿病とは
膵臓からのインスリンの分泌が低下したり、正しく作用しないことなどによって、血糖値が慢性的に高くなっている状態です。代表的な生活習慣病の1つであり、放置していると心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めます。また、糖尿病神経障害、糖尿病網膜障害、糖尿病腎症といった糖尿病の3大合併症にも注意が必要であり、いずれも合併するとQOLを大きく低下させます。
一方で、他の生活習慣病と同様に、ほとんど症状のないまま進行するため「サイレントキラー」と呼ばれます。
糖尿病の症状
以下のような症状が現れた場合には、ある程度糖尿病が進行している可能性が高いと言えます。
- のどの渇き、多飲、多尿・頻尿
- 体重減少
- 倦怠感
- 手足の痺れ、痛み
- かすみ目
- 傷が治りにくい
HbA1c・血糖値を下げるには
HbA1cは、過去1~2カ月の血糖値が反映されています。そのため、HbA1cの値を下げるためには、日々の血糖値を下げる必要があります。
薬物療法
1型糖尿病の場合には、インスリン療法が必須です。
2型糖尿病では、食事療法・運動療法で十分な効果が得られない場合に、薬物療法を組み合わせます。経口血糖降下薬、注射によるインスリンあるいはGLP-1受容体作動薬の投与などを行います。
食事療法
年齢、性別、運動量などを考慮して適正なエネルギー量を把握し、その中でバランスのよい食事を摂ります。
特定の食品が全く食べられない、ということは基本的にありません。当院では、院長、糖尿病療養指導士、管理栄養士が協力して、無理のない食事メニュー、食事の摂り方を提案します。
運動療法
ウォーキング、軽いジョギング、水泳などの有酸素運動に、できればレジスタンス運動(筋力トレーニング)を組み合わせます。
院長と糖尿病療養指導士が協力し、年齢やお身体の状態に合わせた運動療法を提案します。継続することが大切なので、お好みのスポーツなどがあれば、教えていただければと思います。
HbA1c値が高いと合併症を起こす危険性があります
HbA1cの値が高いということは、全身の血管に負荷がかかり続けているということを意味します。
3大合併症(糖尿病神経障害、糖尿病網膜障害、糖尿病腎症)の他、心筋梗塞や脳卒中などを発症するリスクが高くなります。
まずは生活習慣の改善によってHbA1cの上昇と糖尿病を予防し、糖尿病の診断を受けた場合にはすぐに合併症の予防を考慮した治療に専念することが大切です。