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2020.06.11

高齢者の糖尿病⑤~高齢者糖尿病の薬物療法について~

高齢者の糖尿病⑤~高齢者糖尿病の薬物療法について~

こんにちは。高齢者の糖尿病についてのコラムも第5回目となりました。前回は主に食事療法、運動療法、そして急性疾患による糖尿病の増悪であるシックデイ(体調の悪い日:Vol.8高齢者の糖尿病③参照)に触れましたが、今回からはいよいよ、薬物を用いた治療についてお話をしていこうと思っております。
まず大前提ですが、糖尿病の治療はいきなり薬剤による治療ではなく、食事・運動療法で血糖のコントロールを行いますが、この改善が見られない場合に薬物療法が施されることをご認識ください。薬物と言っても様々なカテゴリーに分類され、たくさんの種類の薬剤がありますが、糖尿病患者の身体機能、認知機能、心理状態、栄養状態、他の併用薬剤、社会・経済状況、アドヒアランス、患者とその介護者の希望を考慮し、病態によって治療薬剤が選択されます。特に認知機能やADLを維持する観点から、低血糖を極力避けながら高血糖を緩やかに是正することが重要です。
種類別の経口血糖降下薬の解説は次回のコラムで詳しく触れますが、作用機序(薬剤がその薬理学的効果を発揮するための特異的な生化学的相互作用)別には主に①インスリン抵抗性改善系、②インスリン分泌促進系、③糖吸収・排泄調節系に分類されます。

病態に応じた経口血糖降下薬の選択

本日はこれら経口血糖降下薬を用いた薬物療法の主なポイントを4つに分けてお話致します。

①重症低血糖、転倒・骨折、体重減少などの薬物による有害事象を可能な限り少なくするような治療を行う事が望まれます。又、高齢者においては、腎機能・肝機能低下による薬剤の排泄遅延が生じることから、低血糖を含む有害作用がおこりやすいので、十分な注意が必要です。

②体組成(脂肪量など)、腎機能障害、インスリン分泌低下、インスリン抵抗性、食後高血糖などの病態に合わせた薬剤の選択(上記図参照)と用量の調節が必要です。肥満、ウエスト周囲長高値、脂肪肝、空腹時血中インスリン値やHOMA-IR高値などの場合はインスリン抵抗性が高いと判定します。ビグアナイド薬、SU薬、SGLT2阻害薬などはeGFR(推算糸球体濾過量:どれくらい腎臓に老廃物を尿へ排泄する能力があるかを示す値)を用いて腎機能を評価した後に使用するかを検討します。一般的には血液検査で測られるクレアチニン(Cre)から推算されるeGFRcreによって腎機能を評価しますが、高齢者に多いBMI低値や筋肉量低下のケースでは、シスタチンC(cys)から算出されるeGFRcysなどの指標も用いて評価することができます。

経口血糖降下薬を用いた薬物療法の主なポイント

③認知機能障害がある場合には服薬アドヒアランス(患者さん自身が自分の病気を受け入れて、医師の指示に従って積極的に薬を用いた治療を受けること)低下に対する対策を講じます。又、高齢糖尿病患者は、多剤併用により服薬アドヒアランスが低下しやすく、合併症や併発疾患が多いため、多剤併用になりやすい。多剤併用は服薬アドヒアランスの低下だけでなく、重症低血糖や転倒の危険因子となります。服薬アドヒアランス低下の対策は治療の単純化を行うことである。単に薬の種類を減らすだけでなく、服薬回数の減少、服薬タイミングの統一、SU薬以外の薬剤を一包化(服用時期が同じ薬や1回に何種類かの錠剤を服用する場合などに、それらをまとめて1袋にすること)することもその対策に含まれます。配合剤の使用も対策の一つとなりえます。認知症が進行した場合や厳格すぎる血糖コントロールの場合は低血糖などのリスクや忍容性を考慮し、減量や中止を検討する場合もあります。おくすり手帳の導入、薬剤師や他の医療機関との連携なども重要です。薬剤師が積極的に関わることで、患者さん自身が医師に伝えられずにいた服薬の問題点を見出すこともできます。

④高齢者糖尿病は発熱、下痢、嘔吐、食欲不振などのシックデイに陥る頻度が高く、シックデイの際に脱水になりやすいので、飲水摂取の方法、摂食量が減少した場合の薬物の調整方法、緊急時の受診について、あらかじめ本人と介護者に十分説明しておく必要があります。

経口血糖降下薬を用いた薬物療法の主なポイント

当院では生活習慣に関する指導から糖尿病の専門的な治療まで手厚いサポートをお約束いたします。また栄養管理士や糖尿病療養指導士も在籍しており、専門的な治療により早期発見・早期治療に努めております。気になられることはぜひ当院まで気軽にご相談ください。

 

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