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2019.07.04

高齢者の糖尿病①~高齢者糖尿病と認知機能、身体機能障害~

こんにちは。いつも院長コラムをご愛読いただきありがとうございます。
今回のVol.6号から10回にわたり、高齢者の糖尿病についてお話ししていきたいと思います。ご高齢の方はもちろん、身内の方にご高齢で糖尿病を患ってらっしゃる方の参考になれば幸いです。是非、ご一読下さい。

去る5月24日、日本医師会作成(日本老年医学会協力)「超高齢社会におけるかかりつけ医のための適正処方の手引き」の第3弾、「糖尿病」が発行されました。この手引きは多剤併用による薬物有害事象を防ぐための処方の考え方を中心に解説した手引きとなっていますが、第1弾は「安全な薬物療法」、第2弾は「認知症」を取り上げてきました。この第3弾の手引きを見ていきたいと思いますが、75歳以上の高齢者と老年症候群(高齢者に多い医療、介護を要する徴候や症状)を合併した65歳から74歳の前期高齢者を「高齢者糖尿病」と想定し、お話を進めさせて頂きます。

厚労省から発表された平成28年国民健康・栄養調査結果の概要によると、「糖尿病が強く疑われる者」は約1,000万人!と推定され、その中で65歳以上の高齢者が占める割合は約60%以上との推計が出ております。実に日本国民の12人に1人、65歳以上となると5.8人に1人は糖尿病を有している可能性が高い事になります。今後も高齢化が進む事を鑑みるとさらいに糖尿病を患う患者が増加する事が予想されます。
高齢者の糖尿病では、一般的に老化の特徴としての身体機能や認知機能などの個人差が大きくなります。又、合併症やがんなどの併存疾患、社会状況や経済状況によっても重症度が異なってきます。75歳以上の高齢者の糖尿病患者では特に認知機能障害、ADL(日常生活動作)低下などの老年症候群や重症低血糖、脳卒中の合併症などを起こしやすいと言われております。老年症候群は服薬アドヒアランス(患者自身が自分の病気を受け入れて、医師の指示に従って積極的に薬を用いた治療を受けること)低下のような療養上の問題だけでなく、要介護や脂肪の要因にもなり得ます。

高齢者糖尿病の治療は、非高齢者の糖尿病と同様に、血糖、血圧、脂質、体重を包括的に治療し、血管合併症を予防する事が基本となります。又、合併症の進行予防だけでなく、生活機能やQOL(Quality of life:生活の質)の維持・工場を保ちながら、健康寿命を延ばすことが治療の目的となります。更に高齢者糖尿病では老年症候群の悪化予防に努め、患者や介護者の治療の負担を軽減する事も治療の目的となります。

高齢者糖尿病の特徴

上記表1の⑥にもありますが、高齢者の糖尿病患者は認知機能障害、うつ、サルコペニア、フレイル、ADL低下、転倒、低栄養、多剤併用などの老年症候群をきたしやすいことが分かっております。
例えば、糖尿病患者は、糖尿病でない人と比べてアルツハイマー病に約1.5倍、血管性認知症に約2.5倍なりやすいと言われております。又、認知症の一歩手前の状態であるMCI(Mild Cognitive Impairment:軽度認知障害)にもなりやすいと言われております。高血糖や重症低血糖は認知症発症の危険因子である一方で、糖尿病に認知機能障害が合併すると、高血糖になりやすいだけでなく、重症低血糖もきたしやすくなります。
糖尿病おける認知機能障害では記憶力や遂行機能(実行機能)などが障害されやすく、買い物や食事の用意などの手段的ADL低下や服薬アドヒアランスの低下をきたしやすくなります。

記憶障害や手段的ADLの低下、セルフケアのアドヒアランスの低下やうつ傾向、意欲低下がある場合は認知機能障害のスクリーニングを行う事が望ましいです。

ADLは大きく分けて2つあり、①交通機関を使っての外出、買い物、金銭管理、服薬管理などの「手段的ADL」と、②トイレ、食事、移動などの「基本的ADL」とがあります。糖尿病患者は糖尿病でない人と比べて、手段的ADLが1.65倍、基本的ADLが1.82倍低下しやすく、サルコペニアフレイルをきたしやすいと言われております。特に高血糖、身体活動量低下、低栄養がある場合は注意が必要です。

当院では生活習慣に関する指導から糖尿病の専門的な治療まで手厚いサポートをお約束いたします。また栄養管理士や糖尿病療養指導士も在籍しており、専門的な治療により早期発見・早期治療に努めております。気になられることはぜひ当院まで気軽にご相談ください。

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