先日、某製薬会社の「フレイル」漢方薬理研究会に参加してきました。
約260名の医療従事者が参加という事で、大きな会場が一杯となり、この分野の関心の高さを感じました。
「フレイル」とは、あまり耳慣れない言葉ですが、海外の老年医学の分野で使用されている「Frailty(フレイルティ)」に対する日本語訳です。
「Frailty」を日本語に訳すと「虚弱」や「老衰」「脆弱」などになります。
簡単に言うと「だるい、しんどい、老けてきた、筋力が落ちてきた・・・」といったところでしょうか。
フレイルには筋力低下から起きる「身体的フレイル」という概念のみならず、認知機能の低下やうつから起きる「精神・心理的フレイル」、歯や口の衰えから起きる「オーラルフレイル」、独居や閉じこもりを背景にした「社会的フレイル」などの要素も含まれており、高齢者が陥りやすい心身の虚弱を多面的に表した概念です。
超高齢化社会が進む中で、今後、非常に重要になってくる病態と言えます。また、年齢を重ねるほど発症しやすいことがわかっています。65~69で5%強、70歳代後半の75~79歳で20%弱。80歳以上になると35%近くになるという調査結果が出ており、75歳から一気に増加するという傾向があります。(出典:日本老年医学会誌2015;52;329-335)
国内では2014年に日本老年医学会が提唱して以来、介護予防のキーワードとして注目を集めています。
増え続ける医療費対策として、厚生労働省は「メタボリックシンドローム(メタボ)」に力を入れていくとして取り組んできましたが、2018年度以降、厚労省はこの「フレイル」にも着目し、国民の健康寿命(健康上の問題がない状態で日常生活を送れる期間)の増大に取り組んでいくようです。
下記はフレイルの一般的な診断基準です(Friedらの評価基準)
1、筋力の低下(握力)
2、活動量の低下(不活発)
3、歩行速度の低下
4、疲労感
5、体重減少
以上の5つの項目のうち、3項目以上該当した場合をフレイル、1~2項目該当した場合を前フレイル(プレフレイル)、該当項目が0の場合は健常となります。
健常状態
該当項目=0
プレフレイル
該当項目=1~2つ
フレイル(虚弱)
該当項目=3つ以上
また、厚生労働省が作成したフレイル基本チェックリストという質問事項もあります。 フレイルとなる高齢者を早期に発見して支援を行う介護支援事業の生活機能評価でフレイルの身体的、精神的、社会的側面を含む項目をチェックできる表として活用されています。
ちなみに日本人の平均寿命(文字通り寿命です。)と健康寿命の差は男性9.02年、女性12.40年との事です。
すなわち10年前後は何かしらの病気を抱えて生活を送るということです。
早めに「フレイル」対策を行う事が、この健康寿命の増大に寄与できると考えられます。
当院では、患者様の健やかな生活、人生を全うして頂けるようお手伝いをさせて頂きたいと願っています。「最近、疲れが取れない」、「ちょっとした運動でも体がだるくなってしまう」、「やる気が出ない」など心当たりないですか?
「フレイル」は非常に多くの疾患が関わっているのもフレイルの特徴です。例えば糖尿病や、骨粗鬆症や運動器不安定症、喫煙者に多い慢性閉塞性肺疾患(COPD)なども、高齢者をフレイルに陥れる大きな要因となります。
早め早めの対策が重要です。気になられる事があれば、いつでもご相談下さい。